自然をいただくという時、普通なら旬の食材を食べるということだと思う。でも和菓子の場合は、その小さなフォルムの中に、四季を反映した大自然を見ることができる。そんな壮大な自然の物語が詰まった和菓子。外出自粛で外で自然を味わう機会が減っているいまだからこそ、お家で和菓子を通して四季の移ろいを感じられたらいいな。
【和菓子散歩】青洋 5月の和菓子
毎月楽しみにしている京都紫野にある青洋さんの和菓子。地元農家さんの旬の食材を使った創作和菓子で、毎回行くたびに新しい発見があるお店。
今回は午後にうかがったので、5個中2個は売り切れ…残りの3個と羊羹2種類を購入させていただきました。
青時雨
青葉から滴り落ちる水滴に見立てた豆乳羹製。そして中には緑に着色した餡かと思いきや、驚きの甘く茹でたほうれん草がそのまま入ってるではないか!ほうれん草×和菓子なんて、青洋さんでしか食べられないなんとも斬新な組み合わせ。
紅花栄(べにばなさかう)
目に鮮やかな紅花に辺り一面包まれるような浮島製の和菓子。しっとりした質感の生地から出てきたのは、玉ねぎ!こちらはしっかり玉ねぎ感が残っており、少しおかずっぽさもある。新玉の優しい甘さに思わず口元がゆるんでしまう、優しい優しいお味。個人的には一番印象に残った和菓子でした。
光の舞
あちらこちらに光の粒が舞い遊ぶ道明寺製。薄青、ピンク、黄色の錦玉羹が、光のスペクタルのようにキラキラとした光を纏ったなんとも美しい和菓子。水分多めでとろけそうな白あんと、道明寺のもっちりとした歯ごたえが絶妙な一品でした。
来月はどんな和菓子に出会えるのだろう。
今から楽しみ。
#京都 #和菓子屋 #月に一度
【和菓子にしたい言葉】うつろう
①【映ろう】 光や影が他のものの表面に映っている。
②【移ろう】 時の経過とともにものの状態が変わってゆく、衰えてゆく。 花が散る。盛りが過ぎる。場面が変わる。心変わりする。
Utsurou (Reflection) The mirroring of light and shade of the surface of other items.
Utsurou (Transformation) The progression and decline of all things, within the course of time.The scattering of flower blossoms, the inevitable passing of our prime, the evolution of a particular place, the sifting of the heart. From an exhibition of “Packaging of Japanese beautiful words"
移ろいゆくもの。
それは時とともに変化していくもの。
季節、花、空の色、すみか、人の気持ち…
ずっと変わらないものなんてないと分かっていても、変わらずあってほしいと願う気持ち。それは自然の条理に反しているから、時に辛く苦しくもある。
流れに身を任せ、成るように成ると現状を受け入れることで、少しは楽になれるのかな。
全てをコントロールしようとせず、移ろいゆくものと共に、肩の力を抜いて、ゆるりゆるり進んでいこう。
春の錦
見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける
見渡すと、柳の葉と桜が混ざり合い、都が春の錦織のように彩られている情景を詠んだ歌。新緑と桜色の糸で織りなされる春の情景をカタチにした和菓子です。
抽象と写実
写実的な表現は「もっさりしている」と嫌われる京菓子の世界では、わざと下手に作るくらいがよいとされるそう。
そんな話を聞いていると、ふと京の和菓子は抽象画の世界なのかなと。描写しすぎないからこそ、見る人にある程度の考える余地を残し、想像する楽しさを提供できるのだろうと。
あえて完璧を目指さない「不完全の美」の精神が、そこにあるように感じた。